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男と女は、愛無くしては、ひと時たりとも生きてはいけない。男と女は、かくも悲しい。
ジムニーとの出会い
あれはまだ就職して間もない頃の事だから、1990~92年頃の事だと思う。その頃私は、黒のグランドシビック3ドアハッチバックATに乗っていた。季節は冬。みぞれの降るとても寒い夜のことだった。時刻は8時前後の事だったと思う。仕事の帰りにいつものコンビニで晩飯を買い終わってクルマに戻ると、私のクルマの前に見慣れない色のクルマがすべり込んできた。明るめの水色のエクステリアカラーで、サイドには派手な幾何学模様が入って英語の文字が書かれていた。シルバーの幌にエンジン音はなんとなくポロンポロンと少々耳障りでふつうのクルマとは少し違うな、という印象だった。その頃は、大型の四駆全盛の時代で、そのクルマは街に溢れかえっている三菱パジェロを小さくしたような黄色ナンバーのコンパクトなボディーのジープでボディーサイズに比べてずいぶん外径のでかいタイヤを履いているなあ、と思った。運転席の頭上からリアにかけてシルバーの幌がかかっていた。そのクルマは自分のクルマに比べてずいぶんおんぼろに見えて、よくこんな寒い日にこんなすきま風が入り雨漏りのしそうなクルマに乗るもんだなあ。よっぽど好き者(おたく)かなんかなんだろうなあ、と思った。見ていると、運転席から20代中頃の私より少し若いかな、と見える男性が降りてきた。『踊る大捜査線』で織田裕二が着ているようなアーミージャケットに、やはり軍用の払い下げと思われるウールの黒っぽいベレー帽をかぶっていた。「うわ~っ、カッケー!!」と思った。そのクルマの雰囲気とその男性の個性がみごとに一致していて、クルマと服とその人間の個性がコーディネイトされていて、本当に様になって似合っていたのだ。その時、私は悟った。例え高価なクルマでなくとも、例え錆びひとつなくピカピカに磨き上げたクルマでなくとも、例え機械的に最新式の優れたクルマでなくとも、例え値段の安い洋服を身につけていようともシチュエーション(TPO)に合わせた服装や立ち居振る舞いをしていればカッコいいのだと。もちろんその格好でホテルニューグランドのエントランスに乗り付けたらボーイに嫌な顔をされるだろうが、日常使いでさらりとコンビニに横付けした姿は実に様になっていた。彼はエンジンをかけたまま小走りでコンビニの中へと消えていった。私なぞたかがコンビニに立ち寄る程度のことでも、いちいちエンジンを止めてきちんとロックするというのに、彼はそのようなことはまったく意に介さないようなさりげない仕草でコンビニの中へと消えていったのだ。「やられたな」と思った。「カッコいい」という本質は、モノやお金や出で立ちなどには関係ないのだな、と思った。ただ、その本質を知るのは、ほんの一握りの人間で、本質を知らないモノやお金や服装で他人を判断し決めつける大多数の人間にバカにされなめられ足元を見られないために、私はモノやお金や服装や立ち居振る舞いに気をつけて生活している。ことほどさように本質と現実の間には、天と地ほどの大きな隔たりがある。
 最近その車のことが気になって、スズキ自動車のホームページの「今昔物語」というコーナーで調べてみたところ、黄色のフォグランプが付いたその車は、多分1986年~90年に製造されたJA71C-JMUフルメタルドア・クアトロブルーでシルバーのデラックスタイプの幌が付いたモデルであろう、ということが分かった。
 それから十数年が経ち、さまざまなクルマを経て、私の愛車は1985年式スズキジムニーSJ30FKⅢ型、エクステリアカラーはオリジナルのホワイトになった。国産最後の2ストロークエンジンの乗用車だ。錆びだらけであちこち凹んでいるポンコツで、現代のクルマに比べて全くもって無いない尽くしのローテクだが、私にピッタリのライフスタイルカーだと思っている。
 「ライフスタイルカー」とは、以前『ラピタ』という男性誌で提唱された言葉であるが、その言葉の定義が今ひとつ曖昧であった。
 そこで私は、「ライフスタイルカー」とは、「その人の人生を変えるクルマであり、かつ、その人の人生を表現するクルマである」と定義する。

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テーマ:スズキジムニー - ジャンル:車・バイク

コメント
この記事へのコメント
そういえば……
あの当時、近所の三菱ジープに乗っている青年がフロントガラスを前に倒して乗っていました。それを見て、なんかちょいワル風でカッコいいなぁ~、と思っていました。しかし、サンマルに乗るようになってから知ったのですが、公道をフロントガラスを前に倒して乗るのは当時から道路交通法違反だったんですね。当時のサンマルのカタログを見たら「公道でフロントガラスを前に倒して乗ることは法律で禁止されています」ときちんと書かれてありました。ま、田舎の農道ですし、のどかな時代だったんですね。
2007/04/27(金) 19:45:08 | URL | ジャスティス #O6F.7u1w[ 編集]
いつもありがとうございます
あの頃は、中学・高校時代で自分にとってはとてもいい時間だったんでしょうね。今と違ってのんびりした時代でした。世の中が今みたいにギスギスしていなくてゆっくり時間が流れていました。最近、自分のまわりの時間をゆっくり流しています。私の最近のキーワードは「懐かしさ」です。その言葉が、先を急ぐ私にブレーキをかけてくれているんです。これからも、ちょっと懐かしい話を書き続けます。また遊びにきてください。ちなみに、この連休は、オーバーホールしたサンマルで初の高速道路の長距離ランを試みます。結果は、またご報告します。
2007/04/27(金) 18:10:42 | URL | ジャスティス #O6F.7u1w[ 編集]
どうも!
ご無沙汰してます!
ちょくちょく覗き見だけは、してますが…

ジャスティスさんの記事は、70,80年代の香りで心地いいですね。
僕の初ジムニーの記憶は、近所の農家の青年?僕(高校時代)からすればかなりのオジサンに感じましたが…
その青年が農家の仕事で使ってたSJ30バンでした。
でも、周りには結構四駆乗りが多く物心付いたときには、隣の大工のオジサンが三菱ジープに乗っていました。
ドアの無い車が新鮮でよく隣に乗せてもらってましたよ。
大工のオジサンは、昔ながらの大工でいつも服は、バカボンのパパと同じで冬でも雪駄でしたね~!
んで、煙管で煙草を吸うのがなんとも言えずカッコよかったのを覚えてます。
ファッショナブルと程遠いけど僕にとっては、輝いて見えましたよ。
2007/04/26(木) 23:43:38 | URL | katu6060 #-[ 編集]
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